【あの夏いちばん静かな海のロケ地 神奈川編】平成初期の名作の舞台を平成最後の夏(27年後)に訪れる。

あの夏、いちばん静かな海。 15,601 Views


北野武監督作品の中で好きなものを3つあげるとしたら、その1つに「あの夏、いちばん静かな海。」を挙げるファンは多いのではなかろうか。

海辺の街を舞台にした純愛映画。セリフは無く、サイレント映画に近い。暴力映画のスタンスから一転、北野作品とは思えないようなラブストーリー。

音楽を手がけてるのが久石譲で普通の映画にも劣らないくらい人物の心情が伝わってきてきます。

この映画のロケ地は神奈川県と千葉県に限定されています。海を挟んで隣接していて2日ほどでまわれるので小旅行としてもかなりおすすめ!

途中はフェリーに乗りながらゆっくり海を眺める時間もあります。

今回は西の方から順にロケ地を辿って行き、当時とどう変わっているのか見てみることにしました。

 

サーフィンの練習をしていた海


「あの夏、いちばん静かな海。」で劇中に何度も登場する、茂(真木蔵人)たちがサーフィンの練習をしていた海は相模湾を望む湯河原の吉浜海岸です。水平線の奥にうっすらと見えている平らな島は熱海の初島。

ロケ地 湯河原海水浴場
所在地 足柄下郡湯河原町
写真 2018年


 


さて、私が旅の出発点に選んだのはこの映画のロケ地の中で最も西にある湯河原の海。温泉町『熱海』の駅から真鶴駅方面への路線バスに乗車します。


市街地を抜けたバスは海岸沿いの道路に出ます。この途中のバス停『海の家』で下車。交通量の多い道路を海岸方面へ横断するとこのような階段があります。この階段が映画の世界の入り口です!


階段を下りた所にあるのがサーファー達がよく座っていた砂浜。サーフィンの練習のため足繁く通った茂たちもこの階段を利用していました。映画には何度も登場する光景ですね。サーフィンの練習をする茂を、貴子がここからそっと見守るシーンなど、映画ではたびたび登場しています。しかしシーズンを誤ったのか、海開きを控えた休憩所が設営されてました….笑。

ちなみに映画の撮影はシーズンオフの4月〜5月に行われたようだ。


訪れた日は海開きの前日。海岸沿いを走る『真鶴道路(真鶴ブルーライン)』のガード下には海の家がびっしりと準備されていました。

湯河原海水浴場へはJR湯河原駅、真鶴駅からバスを利用して行く事が出来ます。
(「海の家」停留所下車で目の前)

 

茂が貴子のバスを追いかけた道路

「あの夏、いちばん静かな海。」で茂が貴子(大島弘子)の乗ったバスを追いかける夜のシーンで使用されたのは京急追浜(おっぱま)駅前からおよそ500mほど続く商店街を抜けたあたり。

ロケ地 追浜商店街付近
所在地 横須賀市追浜
写真 2018年


貴子がバスを降りた場所は夏島小学校の校門前あたりであると思われます。実際にはこの位置にバス停はありません。


そして校門の位置から100mちょっとでしょうか、バスを降りた貴子と茂が合流したのはこの古めかしいマンションの前。地図によるとこの建物は海上自衛隊の宿舎だそうだ。


映画ではちょうどこの角度での撮影でした。歩道の左手、当時はなにかの会社の寮のような大きな建物(暗くてわかりづらかったが)があったはずで映画内とは違いがあります。現在は新興住宅が立ち並んでいます。

右奥に横浜ベイスターズの二軍本拠地である追浜球場があります。

 

サーフショップ①

どぶ板通り商店街にあるこの「サーフタコ」というメキシカンレストラン(写真左)は、茂と貴子が訪れたサーフショップのあった場所。

ロケ地 どぶ板通り商店街 サーフタコ
所在地 横須賀市本町
写真 2018年

「あの夏、いちばん静かな海。」は横須賀の中心街でも撮影されました。横須賀のにぎわいの中心は京急本線の横須賀中央駅から汐入駅にかけて。両駅は徒歩で15分程度の距離ほど。

映画内でもサーフショップは何カ所か出て来るが、最初に買ったサーフボードのディスカウント品を見つけてしまった方の店です。(あの強引な値引きを要求して追い返された店ですね笑)

サーフショップは既に無くなり、外見もがらっと変わってしまったが、かろうじて店の名前に「サーフ」が残っているのは何かの縁だろうか。ちなみに向かいにあるFujiというミリタリーショップ。こちらは当時のまま残っていました。

 


どぶ板通り商店街は距離にして100mちょっとだが、米海軍ベースも近くアメリカ情緒漂う商店街。スカジャンの発祥の地としても有名だ。シャッターが閉まってる店も多いが人気飲食店やアイテムショップもあり、歩いているだけでも楽しめる。特に夜はにぎわう。ドルでも買い物が出来るそうだ。

 

サーフショップ②


茂がサーフボードを買ったお店だ。残念ながらこちらのサーフショップも無くなっていて現在はラーメン屋になっていた。

ロケ地 橘場ビル
所在地 横須賀市本町
写真 2018年


どぶ板通り商店街を汐入駅方面から抜け、大通りへ出てみた。国道16号線を挟んで真向かいにあるビルは「よこすか平安閣」。

 

茂が乗車拒否されたバス停


「あの夏、いちばん静かな海。」で茂がサーフボードを持ったままバスに乗ろうとして乗車拒否された「大滝町4」のバス停は実在するバス停をそのままロケ地とした。大滝町バス停には1〜4があるが4の方。

ロケ地 京急バス「大滝町4」停留所
所在地 横須賀市本町
写真 2018年

 

海辺つり公園付近の海岸道路 (横須賀市)


「あの夏、いちばん静かな海。」のオープニングで茂が清掃作業中に捨ててあったサーフボードを見つけた場所があるのは国道16号の裏手を走る海岸道路だ。

ロケ地 横須賀市
所在地 横須賀市
写真 2018年

北野監督はこういう裏道のひっそりした場所をロケ地としてよく選んでいる気がする。しかしこの日は休日で、狭い道路であるが多くの車が停まっていて、釣りのスポットとなっていた。

 

ユニクロ横須賀大津店 (横須賀市)


「あの夏、いちばん静かな海。」でサッカーグラウンドがあった広場。ここももう無くなっていてユニクロが建っていますが16号線の向こう側に見えるマンションとお宮のような屋根の建物(かに料理甲羅本店)は当時の面影を残しています。

映画の映像をみても、元々ここはサッカーをするような広場ではなく、砂利の駐車場にサッカーゴールを置いて撮影しただけのようにみえる。

ロケ地 ユニクロ横須賀大津店
所在地 横須賀市大津
写真 2018年


サッカーグラウンドのあった場所から海側方面をみるとこんな感じ。グラウンドが既に無いのでユニクロの裏手に回った細い道からの撮影になった。

奥に見えている島は東京湾で最大の島、猿島ですね。この島を背景にして茂と貴子が前と後ろでサーフボードを抱えて歩く姿が、この物語の中でも印象的なシーンでしたがここがロケ地でございます。

当時は無かったフェンスが視界を遮ってしまい残念…。

 

浦賀かもめ団地 (横須賀市)


「あの夏、いちばん静かな海。」で茂が住んでいる高層マンションは浦賀にある県営かもめ団地がロケ地。海岸を埋め立てた広大な土地には大小全部で35棟(9号棟は取り壊された)あり、海の見える団地としてロケ地としてもよく使用される。

ロケ地 かもめ団地
所在地 横須賀市浦賀
写真 2018年

かもめ団地の中には高層の建物もあって茂の住んでいる棟はその中の「1号棟」であると思われる。


ラジオを置いて体操をしているおっちゃん(渡辺哲)がいたのはその1号棟の玄関口。階段に手すりが付いたくらいで他に変化はあまりない。遠くから見たら綺麗な感じの建物だったが、よくみると建物の壁面は至るところで剥がれていたりなど全体的に老朽化が進んでいた。

 

東京湾フェリー(横須賀市 久里浜港)


茂たちがサーフィンの大会に向かうために乗った船は久里浜港から出る「東京湾フェリー」。ここ久里浜と千葉県の金谷港を一日に何往復もしている。

ロケ地 東京湾フェリー
所在地 横須賀市久里浜港
写真 2018年


実際に乗船してみた。久里浜港を離れるシーンは映画でも登場した。フェリーのりばは映画撮影当時の位置から少しだけ移動したようだ。

のどかな横須賀の風景がゆっくりと遠ざかって行く姿と、この時映画で流れていたサントラがよくフィットしています。


ここからは片道およそ40分の道のり。船内は客席も多く売店もありのんびり過ごせる。外に出て海風を浴びるのも心地よい。運が良ければこの海域で潜水艦にも遭遇できるそうだ。

 

 
看板

次回は「あの夏、いちばん静かな海。」のロケ地千葉編。サーフィンの大会のロケ地となった千葉県の千倉を旅します。

あの夏、いちばん静かな海

[作品情報] あの夏、いちばん静かな海。 (A scene at the sea) 製作年 1991年 (第3作目) 概要 サーフボードを拾ったことをきっかけにサーフィンに目覚め、直向きに練習する聾唖の青年・茂と、それを優しく見つめる同じく聾唖の恋人、貴子との恋を描いた物語。 キャスト  真木蔵人(茂) 大島弘子(貴子) 寺島進(軽トラの男) 河原さぶ(茂の職場の先輩) 渡辺哲(体操をしていた男) 小磯勝弥(サッカー少年) 芹澤名人(ゴミ収集所の所長) 窪田尚美(みかん女)ほか 音楽  久石譲